猫の妄想

濃い茶色の髪の女の子がいる。
猫のように丸く、鋭い目をしている。
もしかしたら猫だったかもしれない。
何せ、彼女は僕の妄想の中から滲み出してきたモノで、
本当に存在するのかもあやふやだから。
彼女は、昼間は家にいて、日が沈むと出かける。
午前の遅い時間に帰ってくるから、彼女を見るのは僕が外から帰ってきた時だけだ。
彼女とキスをする。
そうすると、お互いのその日の記憶が舌を伝って交換される。
そういうシステムになっている。
彼女は僕の妄想から生まれたモノなので、思考の志向は僕と同じだ。
だから、記憶が混じっても支障は無い。
どうやら彼女は、昨日は通りの信号機をずっと眺めて居たらしい。
暇があって、うらやましい。
彼女が怪訝な顔をしている。
そんな顔するな、僕の一日はそんなにつまらなかったか?