電王戦

電王戦を見ていました.

めっちゃ PV がカッコ良かった(小並感).

小学生並みの感想だけでもいいのですが,色々なことを考えたので記事を書いてみようと思いました.

 

PV での煽りを見ていると強く感じるのですが,今回の電王戦では,「コンピューター VS 人間」という構図がかなり推されていました.

これはかなり人々の注目を集めるのに貢献したでしょう,なにせ感情移入の先がわかりやすいですから.

たとえばサッカーでも,Jリーグはあまり見ないけれど,ワールドカップで日本代表の試合となればなんだかんだ見てしまいます.

「世界 VS 日本」で日本を応援しよう,という構図です.

第4局の対局後の感動も,「コンピューター VS 人間」というのがあって「人間の意地」というストーリーにピッタリだったからなのでしょう.

僕も塚田さんカッコいい…と思っていました.

第3,4,5局とずっとニコ生で観戦していたのですが,これが将棋素人から見てもかなり面白かった.

プロ棋士がいて,ソフト開発者がいて,解説者と聞き手がいて,対局に関係ない棋士や将棋に関連するゲストもたくさん登場し,まさにお祭りといった雰囲気でした.

ニコ生での中継ということで視聴者とのインタラクションもあり,これも楽しい.

今日の対局は,僕としては,今年ちょうど引き分けになって次回がより盛り上がるように,三浦八段に勝って欲しかったです.

 

コンピュータ(や機械や技術)と人間で何かを比べた時,ちょうど「いい勝負」になるというのはなかなかありません.

チェスなんかは人間はもう完全に勝てないそうですし,野球は最近バッティング専門ロボットが出来た程度で機械はまだチームすら結成できなさそうです.

ですが,今回の電王戦はまさに「互角」の戦いで,興行としてはベストのタイミングだったのではないかと思います.

これからも将棋界とコンピュータ将棋界はそれぞれ進歩していくのだと思いますが,そのスピードはさすがにコンピュータ将棋の進歩のほうが速そうです.

2007年に渡辺竜王に Bonanza が奨励会三段(プロ一歩手前)と評価されたという話と,今年2013年にトッププロと互角に戦ったという事をあわせてもこのことは推察できます.

これからは「互角」から「どの棋士も勝てない」になり,さらに差がつけられていくという流れになるのではないかと予想しています.

こうなってしまうと,「コンピューター VS 人間」というのもつまらないものになってしまうでしょう.

 

ところで,先程からずっと「コンピューター VS 人間」という構図に触れていたのですが,今回の勝負で「コンピューター > 人間」が完全に成り立ち,『人類の存在価値が脅かされ』たかというと,そうでもありません.

そもそも,将棋というのはただの 1 つの競技でしかないのです.チェスやクイズや囲碁や東大入試で一つずつ人間を越えていけば「コンピューター > 人間」が成り立つ,という問題でもありません.

ルールが予め決められていて,勝敗も白黒ハッキリつくようなものは,「コンピューター VS 人間」をとても実現させやすい.というか,こういうものでしか実現できない.

本来的にコンピューターと人間とは比べられないのだけれども,偶然お互いが登れる土俵があったから,そこで戦って人間を超えようという目標が生まれた,ということなのでしょう.

コンピューター・機械・技術は,人間の能力を真似して追いついて追い越すだけで満足していてはだめで,「そもそも人間が出来ない」ことを拓いていってこそだ,と僕は考えています.

この前NHKの「ロボット革命」という特番の録画を見せてもらいました.高い放射線量のために人間が原発内で作業できないため,代わって復旧作業をするロボットを開発しようというストーリーでしたが,まさに同じ事でした.

コンピューター将棋で培われた様々な技術が,回り回っていつかコンピューターにしか出来ない何かの礎になる事を願っています.

 

(…めっちゃ他人事っぽく言ってしまいましたが,きっと僕もこういったことに関わっていくのではないかと予想しています.超アバウトですが.)